はじめに:それは「年のせい」ではなく「病気」かもしれません
こんにちは!「愛犬かるびの科学分析ラボ」の運営者です。 愛犬が夜鳴きをしたり、名前を呼んでも反応が鈍くなったり…。老犬の「認知症」は、飼い主にとって最もつらい悩みの一つですよね。
しかし、朗報です。獣医学の最新の見解では、「認知症だから仕方ない」と諦める必要はありません。 獣医師はこれを「認知機能不全症候群(CDS)」という、**治療・管理が可能な「病気」**だと捉えています。そして、そのケアは老犬になってからではなく、**中年期(約7歳前後)**から始まることが大規模調査(Dog Aging Project)で示唆されています。
CDSの原因と「3つの柱」:なぜ多角的な介入が必要か?
なぜ認知症は起きるのか?獣医行動学の専門医による最新の総説(レビュー)論文(出典:Wailani Sung, DVM, DACVB ら)によると、脳の老化は主に3つの原因で起こります。
この「3つの原因」それぞれに、科学的根拠(エビデンス)のある栄養で対処すること。それが最新の治療アプローチです。
柱1:DHA/EPA(脳の保護と抗炎症)
1つ目の柱は、**オメガ3脂肪酸(DHA/EPA)**です。 これらは脳の老化に関連する「DHA欠乏」と「低悪性度の炎症」に対処します。
- 科学的根拠: 複数のレビュー論文(JIVM, 2020など)により、オメガ3脂肪酸の補給は、脳細胞の保護と、認知症の原因の一つである「炎症」を抑える効果について、強いエビデンスがあります。
- 実践: 青魚から抽出された魚油サプリメントや、DHA/EPAが強化された療法食(例:Hill’s b/d)がこれにあたります。
柱2:MCTオイル(脳のエネルギー補給)
2つ目の柱は、**MCTオイル(中鎖脂肪酸)**です。 衝撃的なことに、犬は【※この部分を赤色にしてください】6歳という若さから脳のブドウ糖代謝が低下する【/※この部分を赤色にしてください】ことが研究で示されています。
- 科学的根拠: 老化した脳はエネルギー不足に陥りやすいのですが、MCTオイルはブドウ糖の代わりとなる**「主要な代替エネルギー源(ケトン体)」**として脳に供給されます。
- 実践: 複数の臨床試験(
British Journal of Nutrition, 2010など)により、MCTオイル(例:Purina Neurocare)の補給が、CCDの臨床症状(徘徊、無関心など)を有意に改善することが示されています。 - (参考): 私たちが分析した別の論文(JVIM, 2020)では、MCTオイルが「てんかん発作」を有意に減少させたことも証明されており、「脳」への効果は本物です。
柱3:抗酸化物質/SAMe(脳の老化防止)
3つ目の柱は、脳の「酸化ストレス(サビ)」を防ぐ、抗酸化物質です。
- 科学的根拠: AAHA(アメリカ動物病院協会)ガイドラインでも、抗酸化物質(ビタミンE, Cなど)の補給が強く推奨されています。
- 実践: 特にBビタミンは、**SAMe(サミー)**の生成に必要不可欠です。
- SAMeは、それ自体が**「認知機能の改善(活動性・相互作用の増加)」**を示した臨床試験(Rème CA, 2008)も引用されており、非常に強力な根拠です。
- 私たちが分析した別の臨床試験(Veterinary Record, 2007)でも、
Activaitのような複合サプリメントが、**プラセボ(偽薬)**より有意に症状を改善したことが証明されています。
結論:科学が示す認知症対策の「3つの柱」
「愛犬かるびの科学分析ラボ」の結論です。 老犬の認知症ケアは、**「薬物療法」と、「栄養による多角的アプローチ」**の両輪で行うべきです。
単一の成分ではなく、
最終的なサプリメントの選択は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。 特にSAMeは、他の薬と相互作用する可能性があるため、自己判断は危険です。
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本記事で参照した主な論文・レポート
- (3つの柱の総説): Nutritional Intervention for Canine Cognitive Dysfunction (発行元: Topics in Companion Animal Medicine, 2021)
- (標準治療): 2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats (発行元: AAHA – アメリカ動物病院協会)
- (プラセボ比較): Nutritional supplementation in cases of canine cognitive dysfunction—A clinical trial (発行元: Veterinary Record, 2017)
- (老化の開始時期): Age-related changes in cognitive function in companion dogs… (発行元: GeroScience / Dog Aging Project, 2022)
- (MCTオイルとてんかん): A multicenter randomized controlled trial of medium-chain triglyceride dietary supplementation on epilepsy in dogs (発行元: JVIM, 2020)
- (オメガ3レビュー): Omega-3 Fatty Acids in Companion Animal Medicine (発行元: J Anim Physiol Anim Nutr, 2020)


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